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第266話

その言葉は男性の魅力が満ち溢れていて、看護師は一瞬で弥生に激しい羨望の念を抱いた。

まだ彼女ではないのに、すでにこんなにも大切に扱っている。そして、説明するときの声もとても優しく、彼女の祝福に感謝までしている。

世の中には、どうしてこんなに優しい人がいるのだろうか?

看護師がぼんやりと考えていると、病室のドアが開いた。

長身の瑛介が入ってきた。彼の体からは外の冷気が漂っており、美形の顔は表情がほとんど凍りついているようだった。

病室に入るとすぐに、彼の目はベッド上の女性に向けられた。

部屋を見回した後、彼の視線は弘次に止まった。

「彼女を迎えに来た」

家?

その言葉を聞いて、看護師は内心驚いた。

まさか、「家」という言葉を使うとは。この二人は本当に恋人同士なのか?

瑛介の直截的な態度に対しても、弘次は怒ることなく、相変わらず優しく答えた。「彼女を連れて帰るのは構わないが、まずは彼女が目覚めるまで待ってくれ」

瑛介の顔色は青ざめた。

入る前、ちょうど弘次の言葉を耳にしていた。

衝動的に今すぐ弥生を抱き上げて家に連れて帰りたい気持ちがあったが、理性がそれを制した。そんなことをすれば、弥生の休息に影響が出るだろう。

しかし、彼女をここに置いて弘次の手に委ねることも、瑛介には到底許せなかった。

彼女がずっと静かに眠っていて、自分が迎えに来るまでそうであればいいが、もし途中で目覚めたら、弘次が何か余計なことを言うかもしれない。

そう考えた瑛介は、それ以上何も言わず、椅子を引き出してベッドの反対側に座った。弘次と向かい合って座った。

帰すわけにはいかない。目の前の男が彼女を狙っているのだから。

すると、病室の中で二つの美男子が小さなベッドを挟んで向かい合って座るという状況になった。看護師は針を抜きに来たついでに、このような光景を目撃し、心の中で大収穫だと思った。

仕事でなければ、ここで見張って後の展開を見守っていたかもしれない。

しかし、彼女は勤務中で、自分の仕事をしなければならなかった。

軽く挨拶をしてから、看護師は病室を出て行った。

看護師が去った後、病室には三人だけが残された。

病室内は静寂に包まれ、二人の男はお互いの目を鋭く見つめ合っていた。一方、ベッドの上では弥生が深く眠り、二人の会話に全く気づかないままだった。

しば
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